富山県立大学 文芸サークル のブログ

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活動報告5_「残雪《冬編》」-AnfANg vol.5 掲載作品続編

こんにちは!富山県立大学文芸サークルです。

当サークルでは、毎年、部誌『AnfANg』を制作し、10月の大学祭にて頒布しております。
今年度の大学祭では、『AnfANg vol.5』を販売させていただき、多くの方に手に取っていただきました。
今回は、そんな『AnfANg vol.5』に掲載された作品「残雪」の続編である《冬編》をお届けいたします。

どうぞ、お楽しみくださいませ。

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残雪

ゆうぞら

 

 親戚の家にお世話になるために来たのはいいものの、小さい時に何回か行ったことがある程度で記憶も曖昧だ。

それに加えてこの大雪。この地域の人にとってはいつも通りなのかもしれないけど、ほとんど雪が降らない地域で育ってきた僕としては、珍しい光景だった。

更に運の悪いことにスマホの充電は切れてしまっていた。昨日の夜、充電を忘れてしまったことや、今日寝坊したこと、モバイルバッテリーを忘れてしまったことなど様々な悪いことの積み重ねの結果だ。

 唯一の幸いというべきか、行先の住所と簡単な地図はラミネートして持ってきており、この雪の中でも鮮明に見ることが出来る。まあ、これをやってくれたのは母なのだけど。

ただし、この雪景色の中で簡単な地図があったところで目的地に着くには絶望的だ。人に話しかけるのに躊躇はしない方なので、通行人がいれば声をかけるが、その通行人がいない。途方に暮れていると、先方に人影が見えた。これはチャンスだ。そう思い声をかけようとするも、寒さからか声が上手く出ない。このままだと不審者だと思って通り過ぎられてしまう。

その目の前の人は、僕のことが不審だと思ったからか、足を停めた。そして、

 

「あの、どうかしましたか?」

 

 やや震えた声で問いかけた。確かに今の僕は不審者に映ってもしょうがない。ただ、その声を聞いた瞬間、何となく安心した。

 

「すみません、少し道に迷ってしまって……。秋山さんの家に行きたいんですけど」

 

 するっと出てきた言葉は僕が思っていたよりも落ち着いた声音だった。メモを見せると、幸い知っていた場所らしい。

 

「あ、ここなら案内できますよ」

「本当ですか? ありがとうございます!」

 

 近くの目印なら知っているかも、位の期待感だったので、まさか知っているとは驚いた。

 

「良かったです。親戚の家を訪ねに来たものの、普段は家族と一緒に来るので道をあまり覚えてなくて。しかもスマホの充電も切れて打つ手なしだったんです。更にこんな雪の日だからか人も全然見つからなくて」

「あの……、大変でしたね」

 

 急に話し始めた僕に少し引き気味の表情で彼女は返した。

 

「すみません、急にまくしたてて。案内、お願いします」

 

 申し訳なくなり、案内をお願いした。

 

「いえ、気にしないでください。……こっちです」

 

と歩き出した。これ以上不審に思われるわけにはいかない。制服を着ているから同じ高校になる可能性もあるし。大人しく彼女の後ろをついていく。でも、時間も時間だし、彼女の用事は大丈夫なのだろうか? 何となく会話もなかったので、折角だし聞いてみることにしよう。ある程度まで案内してくれれば方向音痴というほどではないので、多分一人でも行けるはずだ。

 

「そういえば、貴方はこちらの方面に用事あるのですか?」

「はい、帰宅中ですが、こっちに家があるので。そこまで寄り道でもないですよ」

「あ、では地元の方なんですね。あの、遠回りになりそうでしたらそのタイミングで口頭での説明して頂ければ大丈夫です」

「本当に近所なので最後まで案内しますよ。スマホの充電も切れているならもし迷子になっても大変ですし……」

「すみません、ご迷惑をおかけして」

 

 どうやらこの人はかなりいい人らしい。見ず知らずの不審者みたいな人間にも優しくしてくれるなんて。ただ、あまり会話が得意でない様子なので、無理に話しかけない方がいいのかも?

 そんなことを思いつつ五分程無言で歩くと、見慣れた風景になり足取りが軽くなった。

 

「あ、ここなら何となく分かります。よく、この公園でいとこ達と遊んでいたんです」

「確かにここは小学生位までの子達がよく来てますね。自分も誰かの家かここで遊ぶことが多かったです」

「じゃあ、もしかしたら会ってるかもしれませんね」

「そうかもしれませんね」

 

 意外だ。ただ、あの頃は皆知らない子だったし、一緒に遊ぶこともなかったからそこまで覚えてないけど。

 思い出の公園を通り過ぎたら目的地はすぐそこだ。

 

「ありがとうございます」

「いえ、気にしないでください」

「せめてお茶でも……」

「帰りが遅いと親も心配するので大丈夫です」

 

 寒い中案内させてしまったし、それくらいは祖父母も用意してくれるだろう。そう思ったが、このくらいの年齢の娘がいたら、帰りが遅いと親も心配するかもしれない。妹も彼女と年が同じくらいだけど、少し遅いだけで、父親が心配しているし。母は過保護だって笑ってたけど。

 

「そうですか……。残念ですが、遅い時間ですからね。本当にありがとうございました」

 

 僕がお礼を述べると、

 

「では」

 

 彼女は軽く礼をして、帰路についた。

 

 

 

 

 

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「残雪《冬編》」は、ここまでとなります。

お楽しみいただけましたでしょうか。

当初の予定では冬の間に掲載する予定が、早春の掲載になってしまい、長らくお待たせいたしました。

 

ご覧いただきありがとうございました!

なしお